【2008年11月14日(金)付】
米国の独立宣言を起草した第3代大統領ジェファーソンは「言論の自由」の何たるかを知っていた。「私は新聞なき政府より、政府なき新聞を選ぶ」と述べていて、わが業界はよくこの言葉を援用する▼だが、のちに新聞嫌いになったらしい。こちらはあまり引用されないが、「新聞を読まない人は、読む人よりも真実に近い」などと言っている。在職中に色々書かれて腹を立てたのかもしれない▼トヨタ自動車相談役の奥田碩(ひろし)氏も、腹を立てたそうだ。自分のことでではない。「厚生労働行政の在り方に関する懇談会」で、「厚労省たたきは異常」「マスコミに報復でもしてやろうか」などと発言した。報復とはスポンサーから降りることらしい▼国民から負託された公権力の運用に、厳しい目が注がれ、批判が起きるのは健全なことだ。メディアはそれを担っている。役目を知らぬ奥田氏ではあるまいに、一体どうしたことか▼ことにテレビにご立腹だ。率直な物言いで知られるにしても、「2、3人のやつが出てきて、わんわん毎日やっている」とは荒っぽい。年金不祥事を受けて発足した懇談会の座長でもある。政財界への影響力の大きい人が、自由な批判を牽制(けんせい)するような発言は、いただけない▼ジェファーソンに話を戻せば、メディアが大統領に嫌われたのは、役目を果たした証しかもしれない。ただし事実に裏付けられた報道なら、という前提がつく。批判には責任が伴う。報じる側にも反省点はあるだろうが、それでも自由な言論は、社会にとってかけがえがない。
【天声人語2008年11月14日 言论自由】
▼米国の独立宣言を起草した第3代大統領ジェファーソンは「言論の自由」の何たるかを知っていた。「私は新聞なき政府より、政府なき新聞を選ぶ」と述べていて、わが業界はよくこの言葉を援用する
起草美国独立宣言的第三代总统托瑪斯•傑弗遜知道何为“言论自由”。他的那句“比起没有报纸的政府,我会选择没有政府的报纸”被我们新闻界沿用至今。
▼だが、のちに新聞嫌いになったらしい。こちらはあまり引用されないが、「新聞を読まない人は、読む人よりも真実に近い」などと言っている。在職中に色々書かれて腹を立てたのかもしれない
但是,后来他似乎对报纸心生厌恶了。也曾说过“不看报纸的人比看报纸的人更靠近真相”,但这句话则很少被引用。也许是因为在他就任时被别人捕风捉影说三道四而耿耿于怀吧。
▼トヨタ自動車相談役の奥田碩(ひろし)氏も、腹を立てたそうだ。自分のことでではない。「厚生労働行政の在り方に関する懇談会」で、「厚労省たたきは異常」「マスコミに報復でもしてやろうか」などと発言した。報復とはスポンサーから降りることらしい
现在担任丰田汽车公司汽车咨询师的奥田碩先生似乎也是如此。但他不是因为个人的事而生气。他在前一阵子举办的〈关于劳动福利理想状态座谈会〉上放出了 “厚生労働省现状异常”“是不是也应该报复媒体”等言论,而所谓的报复好像只是从媒体赞助商的行列中退出。
•在り方:应有的┏状态〔样子〕yīngyǒu de zhuàngtài〔yàngzi〕,理想lǐxiǎng的状态.
社会主義の在り方/社会主义应有的状态.
(1)〔広告の〕出资做广告者chūzī zuò guǎnggàozhě,广告主guǎnggàozhǔ.
(2)〔資金の援助者〕资助者zīzhùzhě,赞助单位zànzhù dānwèi;[出資者]财东cáidōng.
スポンサー探しが大変だ/找资助者很困难.
▼国民から負託された公権力の運用に、厳しい目が注がれ、批判が起きるのは健全なことだ。メディアはそれを担っている。役目を知らぬ奥田氏ではあるまいに、一体どうしたことか
国民对于他们所托付的权力运用保持严密关注,甚至产生一些批评意见都是为了从一个侧面健全国家体制。而媒体正是承载这些意见的媒介。奥田氏又不是不知道自己的职责所在,但这究竟是怎么回事呢?
▼ ことにテレビにご立腹だ。率直な物言いで知られるにしても、「2、3人のやつが出てきて、わんわん毎日やっている」とは荒っぽい。年金不祥事を受けて発足した懇談会の座長でもある。政財界への影響力の大きい人が、自由な批判を牽制(けんせい)するような発言は、いただけない
特别令他们气愤是电视报道。就算知道新闻报道通常都直言不讳,但是“每天都有两三个家伙滚出来,汪汪乱叫”的这种言论似乎过于粗暴了。受养老金丑闻影响的恳谈会会长益是如此。虽说他们都是财政两界影响力极大之人,但是不应该牵制这种自由的批判。
即使jíshǐ……也不yě bù…….
わたしにしても困る/就是我也不好办.
うまく行くにしてももうけはない/即便搞得顺利,也赚不了钱.
若いにしても責任を免れるわけにはいかない/即使年轻,也逃避不了责任.
▼ジェファーソンに話を戻せば、メディアが大統領に嫌われたのは、役目を果たした証しかもしれない。ただし事実に裏付けられた報道なら、という前提がつく。批判には責任が伴う。報じる側にも反省点はあるだろうが、それでも自由な言論は、社会にとってかけがえがない。
我们再看傑弗遜总统的那两句话,其实美国总统讨厌媒体的原因也许是任务完成的证明。但前提一定是要讲实情。批判同时也要承担责任。对于这一点报道方也需要反省。但自由言论在社会中的地位的确无可替代。
解说:トヨタ自動車の奥田碩取締役相談役は12日、首相官邸で開かれた「厚生労働行政の在り方に関する懇談会」で、テレビの厚労省に関する批判報道について、「あれだけ厚労省がたたかれるのは、ちょっと異常な話。正直言って、私はマスコミに対して報復でもしてやろうかと(思う)。スポンサー引くとか」と発言した。
同懇談会は、年金記録や薬害肝炎などの一連の不祥事を受け、福田政権時代に官邸に設置された有識者会議で、奥田氏は座長。この日は12月の中間報告に向けた論点整理をしていた。
奥田氏の発言は、厚労行政の問題点について議論された中で出た。「私も個人的なことでいうと、腹立っているんですよ」と切り出し、「新聞もそうだけど、特にテレビがですね、朝から晩まで、名前言うとまずいから言わないけど、2、3人のやつが出てきて、年金の話とか厚労省に関する問題についてわんわんやっている」と指摘し、「報復でもしてやろうか」と発言。
さらに「正直言って、ああいう番組のテレビに出さないですよ。特に大企業は。皆さんテレビを見て分かる通り、ああいう番