【2008年12月1日(月)付】
出張した博多の料理屋で、おかみさんが教えてくれた。「鍋物の白菜は縦に切るといいですよ」。肉厚の白い軸を繊維に沿って長く切れば、なるほど、うまみと歯ごたえが残る。旬の味覚に納得した▼ 不覚にもというべきか、家族に鍋奉行と恐れられながら白菜はずっと横に切ってきた。ただ、シメの雑炊まで考えると、うまみが鍋全体に回るのも悪くない。くったりと汁を吸ったのを好む人がいれば、そんな「出がらし」はごめんという向きもあり、ここは奉行たちの裁きも分かれよう▼朝の畑に霜が降り始める頃、白菜は甘みを増す。国内有数の産地、茨城県八千代町を訪ねた。この野菜の故郷、中国からの農業研修生が収穫を手伝っていた。ひと抱えはある株を特殊な刃物でザクリと大地から切り離し、二段重ねにしていく▼外の葉を何枚かむけば、水洗いしたかのような純白。白という色の魔力か、量感あふれる丸みがなまめかしい。畑ではそのまま箱詰めにしていたが、楠本憲吉が詠んだ風景が重なる。〈洗はれて白菜の尻陽(ひ)に揃(そろ)ふ〉▼ありふれた食材を脇役に、卓上コンロ一つで盛り上がる鍋物は不況との相性がいい。電通総研が先ごろ発表した注目商品でも、生活防衛とともに、在宅時間を充実させる「ウチごもり」がキーワードだった▼こもっていたら、はや師走。この時代、縦に切っても横に切っても確かな明日は見えないが、だからこそ、きょう一日を味わい尽くすという生き方がある。山海が香る湯気の向こうでなじみの顔が笑う。そんな夕べも大切にしたい。
【天声人語2008年12月1日 留意身边的美味】
▼出張した博多の料理屋で、おかみさんが教えてくれた。「鍋物の白菜は縦に切るといいですよ」。肉厚の白い軸を繊維に沿って長く切れば、なるほど、うまみと歯ごたえが残る。旬の味覚に納得した
我出差时曾在博多的一家菜馆里,得到了老板的真传。“放在火锅里的白菜最好竖着切”。如果顺着肉多的白色纤维切成长条状的话,果然,其中的美味和嚼劲儿都保留其中。我也是在那时真正明白了什么是“时令的时鲜”
旨味:(1)〔味〕美味měiwèi,味道好wèidao hǎo.
甘味・旨味のある酒/味道好的酒.
(2)〔味わい〕巧妙qiǎomiào,有妙处yǒu miàochù.
甘味・旨味のない文章/枯燥kūzào无味的文章.
老優の芸にはなかなか甘味・旨味がある/老演员的演技中有绝妙之处.
(3)〔もうけ〕利益lìyì,有油水yǒu yóushui,赚头zhuàntou『口』.
甘味・旨味のある商売/有利可图的生意shēngyi.
歯ごたえ咬头。(这个东西没咬头)干头。(这工作有干头)
▼ 不覚にもというべきか、家族に鍋奉行と恐れられながら白菜はずっと横に切ってきた。ただ、シメの雑炊まで考えると、うまみが鍋全体に回るのも悪くない。くったりと汁を吸ったのを好む人がいれば、そんな「出がらし」はごめんという向きもあり、ここは奉行たちの裁きも分かれよう
这也可以说是一种失败吧,每次和家人一起吃火锅时我都把白菜横着切了。不过,如果考虑到至今所作的杂菜粥的话,能把白菜的精华全部留在锅中也未尝不是一件好事。如果有人喜欢将汤汁一饮而尽的话,即使略微“寡淡”也可以忍耐,就这样,人们的裁决分裂了。
(1)〔失敗〕失败shībài,失策shīcè,过失guòshī.
横綱は不覚の一敗を喫した/横纲〔相扑的冠军大力士〕因疏忽shūhu输了一场.
あんな人と結婚したのは一生の不覚だ/跟那种人结婚,一辈子全完了〔真是瞎了眼〕.
(2)〔思わず〕不知不觉bù zhī bù jué『成』,不由得bùyóude.
不覚にも涙がこぼれた/不由得落下泪来.
不覚にもそのわなに落ちた/没想到掉进了那个圈套quāntào.
(3)〔知覚のない〕没有知觉méiyǒu zhījué,失去shīqù知觉.
前後不覚に眠る/昏睡.
不覚をとる 遭到失败.
油断して不覚をとるな/不要粗心大意cū xīn dà yì搞糟了.
試験に不覚をとる/考试竟然失败了.
(1)〔合計〕合计héjì,总共zǒnggòng.
締めをする/合计.
今月までで1度締めを出してください/到本月底请结算jiésuàn一次.
きょうまでの締めはいくらになりますか/到今天为止wéizhǐ共计多少钱?
(2)〔封印の〕封fēng,缄jiān.
締めを書く/划上封缄.
(3)〔半紙の〕一百帖yībǎi tiě,二千张èrqiān zhāng.
ちり紙1締め/手纸两千张.
(茶,咖啡等经煎沏后)乏味,变淡
▼朝の畑に霜が降り始める頃、白菜は甘みを増す。国内有数の産地、茨城県八千代町を訪ねた。この野菜の故郷、中国からの農業研修生が収穫を手伝っていた。ひと抱えはある株を特殊な刃物でザクリと大地から切り離し、二段重ねにしていく
清晨落在田地里的每一层霜,都令白菜的味道更加香甜。我造访了国内屈指可数的白菜产地—茨城県八千代町。在这个蔬菜的故乡,有很多从中国来的农业研究生帮助他们收割。他们将一抱白菜用特殊的刀“喀”一下子与土地分离,进行二次加工。
一下子裂开yīxiàzi lièkāi.
すいかをざくりと割る/一下切开qiēkāi西瓜.
ざくりと包丁を入れる/用菜刀(使劲)切进
▼外の葉を何枚かむけば、水洗いしたかのような純白。白という色の魔力か、量感あふれる丸みがなまめかしい。畑ではそのまま箱詰めにしていたが、楠本憲吉が詠んだ風景が重なる。〈洗はれて白菜の尻陽(ひ)に揃(そろ)ふ〉
表面的菜叶就像被清水洗过般晶莹剔透。也许是因为白色本身就有魔力。令这本身就充满量感的圆白菜更加丰满。虽说白菜随后立即装箱了。但我们还能感受到楠本憲吉诗中的风景“清洗后的白菜,排列在阳光下”
[美しい]艳丽yànlì;[色っぽい]娇艳jiāoyàn,妖艳yāoyàn,娇媚jiāomèi,妖娆yāoráo,妖冶yāoyě;[エロチックな]色情sèqíng.
艶めかしい描写/色情的描写.
艶めかしいしぐさ/肉感的动作.
艶めかしい目つき/风骚fēngsāo的眼神.
▼ありふれた食材を脇役に、卓上コンロ一つで盛り上がる鍋物は不況との相性がいい。電通総研が先ごろ発表した注目商品でも、生活防衛とともに、在宅時間を充実させる「ウチごもり」がキーワードだった
餐桌上摆上一个琨炉,用司空见惯的食材煮得沸腾的火锅与当今的不景气倒也相合。电器研究会近日发表的“百姓关注商品”名录中,与生活防卫同样站主流地位的还有充实家庭生活的“室内游戏”。
_配角pèijué.
脇役をつとめる/扮演配角.
この映画は脇役が好演している/这部影片的配角演得很出色.
焜炉] 【こんろ】 【konnro】 小炉子xi
ǎolúzi.
電気焜炉/电炉.
石油焜炉/煤油炉.
焜炉に火をおこす/生炉子.
焜炉でお湯を沸かす/用炉子烧shāo水_.
▼こもっていたら、はや師走。この時代、縦に切っても横に切っても確かな明日は見えないが、だからこそ、きょう一日を味わい尽くすという生き方がある。山海が香る湯気の向こうでなじみの顔が笑う。そんな夕べも大切にしたい。
在不知不觉的游戏中,腊月已悄然而至。这个时代,不管竖着切也好横着切也罢,都是看不清未来的,因此社会才出现了“今朝有酒今朝醉”的生活方式。即使闻到山珍海味的香气也只会露出“老相识”般的笑容。希望大家能重视这样的“黄昏”时节。
已经yǐjing,早已zǎoyǐ.
早5時を回った/已经过了五点钟了.
早五十の坂を越えた/早已过了五十
(1)〔なれ親しむこと〕熟人shúrén,熟识shúshi,相好xiānghǎo.
顔馴染み/相识.
幼馴染み/童年的朋友;总角之交zǒng jiǎo zhī jiāo.
むかし馴染み/老相识.
馴染みの店が1軒できた/结识一家商店.
お馴染みですから安くします/因为是┏熟客〔老主顾〕,给您少算点.
(2)〔男女の〕亲密关系qīnmì guānxi,情人qíngrén.
馴染みの女/恋人; 情人.
馴染みの間柄/亲密的关系
解说:鍋料理(なべりょうり)は、食材を食器に移さず、鍋に入れた状態で食卓に供される料理。鍋物(なべもの)、あるいはただ鍋と呼んで指す場合もある。複数人で鍋を囲み、卓上コンロやホットプレートなどで調理しながら、個々人の椀・取り皿に取り分けて食べるのが一般的である。特に冬に好まれる。
現代においては、通常は複数人で囲んで食べるため一抱えほどの大きさの鍋を用いるが、一人用の鍋も市販されており、これを用いる場合は椀などに取り分けず、鍋から直接食べることもある。